多数の芸舞妓が出演し、新緑の華やいだ雰囲気が楽しめる公演。明治初期の1872年、京都で開かれた日本初の博覧会に合わせて始まりました。一時期中断することもありましたが、1951年から約半世紀にわたり春・秋と年2回の公演が実施されました。
京都の五花街で、春の舞踊公演を開いているのは四つ。3月末から順次開かれ、先斗町の「鴨川をどり」は、最後を締めくくる舞台として親しまれています。かつては、フランスの詩人ジャン・コクトーやイギリス出身の喜劇王チャーリー・チャップリンらも訪れた公演。世界中から人々が訪れる、京都の花街を物語るエピソードの一つです。公演の会場は、三条大橋のすぐ南に建つ先斗町歌舞練場(1927年完成)。玄関は先斗町側で、建物裏の鴨川から目にされた方も多いのではないでしょうか。大正~昭和初期に流行したスクラッチタイルが表面に多様されたモダンなデザインの建物で、大阪松竹座や東京劇場なども手掛けた劇場建築の名手・木村得三郎氏が手がけました。陶板やテラコッタの装飾も美しく、舞台だけでなく、近代建築の名作としても楽しめます。
春公演とはうってかわって、しっとりとした趣に包まれるのが秋の舞台。芸子たちの磨き抜かれた芸を、披露する場という意味合いがあります。鴨川の清い水にちなんで名付けられた「水明会」。1930年に第1回公演が始まりました。戦後の一時期は年2回、公演が行われ、しばらくして年1回に。1999年からは今の10月に開催され、今に定着しています。4日間という短い期間ですが、日本の伝統芸を凝縮した濃密な舞台を体感していただけるはずです。